あの春、君と出逢ったこと
しばらく考え、口角を上げて笑っている煌君をみて、首を横に振る。
『苦手じゃないよ⁇』
私の中で、天敵である煌君に、苦手なものを教える必要はないと判断されました。
何て、心の中でつぶやいてみる。
『嘘ついても、バレるけどな』
そんな私の嘘を見破った煌君が、案の定、馬鹿にしたような笑みを浮かべてそう言った。
……とことんムカつくやつ。
絶対、煌君って大人になっても変わらず毒とか吐く人間になると思うよ?
もう、どうせならハゲてしまえばいいのに。
『誰がハゲるかよ』
『なっ……⁉︎』
心で呟いたつもりの言葉に返され、慌てて両手で口を押さえる。
そんな私の反応を見た煌君は、満足げに笑いながら、持っていた手持ち花火の一本を私に突き出す。
『ん……⁇』
その、煌君に突き出された花火の意味がわからず首を傾げる。
そんな私に、少しイラついたように頭をかいた煌君が、私の手を掴んで、花火を握らせた。
『2本同時とかは、ダメなの?
私、自分の花火持ってるよ⁇』
握らせられた花火を見ながら煌君にそう言う。
だって、折角の花火なんだから、1人一本じゃなくて、二本同時にとか使ってみたいじゃない⁇
『栞莉チャンって、結構鈍感だよなー』
『栞莉。あなた、本当に面白いわね』
そんな私達のやりとりを見ていた快斗君と翠が、笑いながらそう言うのを聞いて、頭にクエスチョンが浮かぶ。
だって、私、絶対鈍感じゃない自信があるし。
『余計なこと言うな』
クエスチョンが消えないと私と違って、意味がわかったのか、少し低めの声で、煌君が2人にそう言う。
『おー、怖い怖い』
そんな煌君の言葉を無視した翠。
そして、無罪を主張するかのように、両手を上にあげた、まるで正反対な反応をした快斗君を見て、笑みが溢れる。
『ちょ、栞莉チャン!! 笑ってないで助けろよ!』