あの春、君と出逢ったこと
『変わった……⁇』
『ええ。女の子らしくなったわ』
笑いながらそう言った翠に、自分の顔に手を当ててペタペタと触る。
顔ら変わってない気がするんだけどな?
『顔じゃなくて、雰囲気よ』
『雰囲気……⁇』
それでもわからず首を傾げる私を見て、自分で気づくのも大切よと言った翠が、クスッと笑う。
……雰囲気が変わった⁇
どういう事だろ?
『まぁ、琹莉のない頭で考えても、意味ないわ』
『ない頭って何⁉︎
私にも、脳みそくらいあるよ!』
カバンで翠の背中をバシッと叩きながら反論するも、私のカバンを翠が避ける。
『考えが甘いわね?』
そんな私を見て鼻で笑った翠を目を細めて睨みつける。
……煌君並みにムカつくよ、翠。
『おめでとう、翠。
第2号に任命します』
もうこの際だから、私の天敵第2号に任命する事にしよう。
煌君がボスだとしたら、中ボス的な……⁇
『……何に任命されたの、私』
『私の中の天敵団員!』
眉間にしわを寄せてそう言った翠に、人差し指を向けて、ドヤ顔でそう言ってみる。
『なら、第1号は煌なのね』
『そりゃあ、もちろん‼︎』
私のドヤ顔には触れず、サラッとカマをかけた翠に気づかずに罠に引っかかってしまう。
『もちろん、ねぇ?』
ニヤリと口角を上げた翠を見て、表情筋が引きつっていくのがわかる。
……私、バカ?
何自分から墓穴掘ってるの!
『別に、好きとか、そういう意味じゃないから!』
『あら? 可笑しいわね。
私は、好きなんて一言も言ってないわよ⁇』
そう言って笑みを深めた翠の表情を見て、背中に冷や汗が流れる。
……ああ、本当。
私って、バカだね。