あの春、君と出逢ったこと
ニヤニヤと私の顔を覗き込んでくる翠から顔を横に逸らす。
……この調子じゃ、確かに快斗君にもばれちゃうか。
煌君に勘付かれるのも、時間の問題かもしれないよね?
そう思うと、肩が重く感じて、思わず盛大なため息をつく。
『翠、煌君にバレないかな?』
未だに口角を上げている翠に視線を向けてそう言うと、少し考えた素振りを見せた翠が、首を横に振る。
『それは無いわね。
あいつ、鈍感だもの』
そう言った翠の言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
……でも、鈍感な煌君ってイマイチ想像できないけど。
翠が言ってるんだから、安心してもいいよね?
『で、告白はするの?』
興味津々というように聞いてきた翠に、思わず足が止まる。
『……琹莉⁇』
いきなり立ち止まった私を不思議に思ったのか、翠も立ちどまり、私の名前を呼ぶ。
…告白?
私が、煌君に⁇
絶対断られるに決まってるし、第一、告白して頷いてもらっても、私はもう直ぐ……。
そこまで考えて、慌てて思考を切って唇を噛み締める。
私の運命は確かに決まっているけど。
受け入れてきたけど、今更、嫌だなんて、絶対に言えない。
言ったとしても、変わるわけ無いんだから。
『……っ、私は、まだ考えてないよ!
翠はどうするの?』
視界に、翠の心配そうな顔が映って、慌てて笑みを取り繕う。
そんな私を怪訝に思いながらも、渋々納得したのか、翠が首を振って笑った。
『私はするつもり無いわ。
絶対、嫌われてるもの』
そう言った翠は少し悲しそうで、始業式の翠と重なる。
……嫌われてる?
翠が、快斗君に⁇
見ててわかるくらい、快斗君って翠の事好きだから、それは絶対無いと思うんだけど。