あの春、君と出逢ったこと
『いただきまーす!』
久しぶりの2人での夕飯に、テンションが上がりながらも、手を合わせてそう言う。
……それにしてもだ。
『お母さん、料理の腕、中々上がらないね』
『そ、んなこと……な、無いわよ!』
お皿の上に乗る、歪な形のハンバーグを見て苦笑いを浮かべる。
昔から仕事一筋だったらしいお母さんは、家事が全くできない。
その代わり、昔はお父さんが仕事をしながら主夫的な事をしてたんだよね。
それじゃあ大変だって私が手伝い始めてからは、家事は私担当になったけど。
『……琹莉のハンバーグの方が美味しいわ』
自分特製のハンバーグを一口食べ、眉間にしわを寄せたお母さんが、そう言って水を飲む。
『私、お母さんのハンバーグ好きだけどな』
そんなお母さんを見て、自分もハンバーグを口に入れる。
昔から、お母さんがいるときはハンバーグで、それも毎回形が歪で、少し焦げた味がする。
今回も変わらない味にホッとしながらハンバーグを食べ進めた。
『ご馳走様でした‼︎』
丁度私と同じタイミングで食べ終わったお母さんの皿と一緒に、流し台に持っていく。
『琹莉、今日くらいは私がやるから、明日の準備してきなさい?』
『……うん! お願い』
お母さんの言葉に素直に頷いて、自分の部屋に向かう。
林間学校だから、準備するものは……確か、しおりに持ち物欄があったはずだから、それを見ればいいよね?
私が持っている中で1番でかいリュックをクローゼットから引っ張り出し、そこに荷物を詰め込んでいく。
肝試し……懐中電灯ももってた方がいいかな?
懐中電灯はどうするのかと思い、しおりに目を通す。
んー……一応しおりには書かれてないから、大丈夫だよね!
明日の集合時間も早いから、早めに寝よう。