あの春、君と出逢ったこと
『言い争いじゃなくて、どっちが先に課題終わらせれるか勝負すれば良いじゃない』
言い争いながら睨み続け合う私達に、呆れながらそう言った翠の言葉に、思わず固まる。
……確かに、このまま言い争ってても課題が終わるわけじゃないし、馬鹿じゃないって証明もできるし。
『それ、のった‼︎』
『……面倒くせえ』
同意した私と違って、舌打ちをしながらそう言った煌君を見て、口角を上げる。
『負ける自信があるからだよね?』
『……やってやる』
ニヤニヤと笑いながら挑発すると、煌君のこめかみがピクリと動いたかと思うと、イラつきを含めた声で、煌君がそう言った。
『翠、早く終わらそう』
『行くぞ、快斗』
私は翠を、煌君は快斗君の手首を掴んで、班ごとに部屋が分かれているため、一応同じところに向かう。
部屋につき、どちらかともなくドアを勢いよく開け、カバンを放り投げて、課題に取り掛かる。
多すぎる紙の量に溜息をつきながらも、何故か隣に座っている煌君に馬鹿にされないように、急いでシャーペンを走らせる。
『……これって、こんなに急いで解く必要ないよな?』
『快斗⁇ あんたはただでさえ遅いんだから、急ぎなさいよ』
目の前で翠と快斗君がそんな会話をしているのを聞き流しながら解いていると、一門、中々解けない問題にあたってしまった。
……見たことはある問題のような気がするんだけど。
シャーペンをくるくると回しながら考えていると、突然私の手の中からシャーペンが消えた。
『え……⁉︎』
驚いて課題から顔を上げると、私のシャーペンを持った煌君が、私の課題の中の問題を指す。
『解けないんだろ』
いつものように馬鹿にされるのかと身構えた私を見て、珍しく緩く笑った煌君に思わず固まる。