あの春、君と出逢ったこと
いつもの煌君からして、ここでそんな笑みを浮かべるなんて、あるの?
急いで課題を解きすぎて、少しおかしくなったんじゃ……⁇
本気で煌君の心配をした私の隣に身を乗り出した煌君が、課題の問題を指して私を見る。
『……教えてやる』
そう言った煌君を見ると、思ったよりも近くにいた煌君と目が会い、顔に熱が集まっていくのを感じる。
……反則、だと思う。
さっきまで、言い合いして、睨み合ってたのに。
いきなりこんな表情で、そんなこと言うなんて。
『……よろ、しくお願いします』
敬語になるのは仕方がないと片付けて、赤くならないように、煌君から課題に意識を移す。
『この問題はまず___』
順序良く、ゆっくりと分かりやすく説明する煌君の言葉を聞きながら、問題を解いていく。
さっきまで悩んでいたのが嘘のように、簡単にに解けていくのに驚きながらも、煌君の説明を聞いていく。
『こんな感じ、だな。
分かりにくかったらごめん』
そう言って笑った煌君に思いっきり頭を横に振って、笑顔でお礼を返す。
やっぱりこんなことを笑って言うなんて、煌君は少しおかしくなったのかも……なんて、ね。
時々、煌君に教えてもらいながら残りの課題を解いていく。
そうやって、何とか担任が言っていた予定の時間よりも早く終わらせる事が出来た。
『んー……やっと終わった‼︎』
最後の問題を解き終わり、シャーペンを机に置いて、思いっきり背伸びをする。
『俺、もう死んだ』
目の前で机に突っ伏してそう言った快斗君の頭を、翠がバシッと叩く。