あの春、君と出逢ったこと



『少し外に出ましょう⁇


夕ご飯まで時間があるわ』



『それ賛成‼︎』


翠の提案に賛成して、他の人の邪魔にならないように、静かに外に出る。



『空気が美味しい気がする〜‼︎』


『3時間ぐらい部屋に篭ってたからな』




外に出て、思いっきり空気を吸い込んでそう言った私に、煌君がそう返す。



『少し歩いてもいいのかな?』



隣にいた翠にそう聞くと、少し考えた翠が頷いたのを見て、翠の手を引いて煌君達から離れる。



『どうしたのよ、琹莉』



私の突然の行動に驚いたのか、少し速い瞬きを数回してそう聞いてきた翠に、口角を上げる。





『肝試し‼︎ 快斗君となれるような祈っとくよ』



そう言った私を見て、固まった翠の顔が、徐々に赤くなっていく。


『翠、顔赤いよー』



そんな翠の頬を突きながらそう言うと、余計に顔を赤くした翠が私の手を払う。



『そう言う琹莉はどうなのよ??』



落ち着きを取り戻したのか、いつもと同じ声でそう言った翠に、今度は私が顔を赤くする番で。



慌てて、赤くなっていく顔を手で覆う。




『琹莉こそ、なれるといいわね』



ニヤニヤと笑いながら言った翠の言葉を聞かないように、両手で耳をふさぐ。


聞いたらダメだ。絶対に顔が赤くなっていく!



危機を感じて、聞かないように耳を塞いでいた私の頭の上に、誰かが肘を置いたような感触がして顔をあげる。



『顔、真っ赤』


『なっ……煌君⁉︎』




顔を上げて視界に入った予想外の人物に、慌てて煌君から距離をとる。



肘を置いたのが煌君って事は、今の会話、聞かれてたってこと⁇



< 149 / 262 >

この作品をシェア

pagetop