あの春、君と出逢ったこと
それじゃあ、私が煌君の事が好きだって事、バレたってこと⁉︎
パニック状態の頭をなんとか落ちつかして冷静になろうと深呼吸をするも、中々落ち着けない。
違う。
落ち着けないんじゃなくて、落ち着けるわけがないんだ。
『お前、何慌ててんの?』
1人パニックを起こす私に近づいてきた煌君の余りに普通の様子を見て、頭が冷静になっていく。
……もしかして、聞いてなかった⁇
我に帰って翠に視線を移すと、大丈夫とでも言うように両手で丸を作った翠と目があう。
大丈夫って事は、聞かれてなかったって事で。
聞かれてなかったって事は、煌君にはバレてないって事だよね?
『何でもない‼︎ ちょっと混乱しちゃって』
不思議そうに私を見る煌君に笑みを作ってそう言う。
あなたのせいで混乱してました。
なんて、言えるわけないしね?
納得したのか、私の頭に再度置かれた煌君の肘を払い落とす。
『私の頭は肘置きじゃないよ!』
『お前がチビなのが悪いだろ?』
『いつも言ってますが、平均です!』
さっきまでの調子を取り戻したのか、いつも通りいい合えた事に内心ホッとする。
私が焦ってたら、余計にバレる可能性が高くなるかもしれないし。
気をつけないとね?
馬鹿みたいに、突然お互いの顔を見合わせて笑い出した私達を、快斗君と翠が呆れながら見ているのが視界に入る。
『そろそろ戻らないとかな?』
煌君と2人で翠と快斗君の所に戻りながら、空を見上げて翠にそう聞く。
『そうね……だいぶ日が落ちたわ』
私の言葉に、同じ様に空を見上げてそう言った翠に頷いて、先頭をきって宿舎の中に戻る。