あの春、君と出逢ったこと
宿舎の中に入ると、同じように課題を終わらした人たちが一斉に食堂に向かっていた。
『丁度お腹空いてたんだよな、俺!』
そう言って、意気揚々とその集団についていった快斗君の後ろ姿を見て、3人で溜息をつく。
『あの馬鹿、4人が揃わないと貰えない事、知らないのか?』
『快斗が聞いてるわけないじゃない』
そう言って再度溜息をついた朝倉双子を見て、苦笑いを浮かべる。
この2人の言葉を直接聞いてたら、快斗君、絶対ぐちぐちと文句を言ってたんだろうな。
先に食堂に入っていった快斗君を想像すると、容易にその場面が想像できて、密かに肩を震わせる。
『噂をすれば、戻ってきたわ』
そう言った翠の言葉に視線を向ければ、丁度私たちが食堂の列に並んだタイミングで、快斗君が肩を落としながら戻ってきていた。
『貰えなかったー……』
そう言った快斗君の声が物凄くガッカリしていて、思わずこみ上げてきた笑みを抑える。
それは私だけじゃなかったらしく、隣で、煌君と翠も肩を震わせていた。
『何笑ってんだよ‼︎』
そんな私達に気づいたのか、そう声をあげた快斗君に、周りに迷惑にならない様に笑い声を抑える。
だって、本当に想像通りだったし、物凄くテンションが落ちてる声なんだもん。
聞いたら絶対に笑っちゃうって。
『腹へったー……』
笑いをこらえる私達を無視する事にしたのか、列に並び直した快斗君がそう言って肩を落とす。
『我慢しなさいよ、快斗』
そんな快斗君に、やっと笑いが収まったのか、少し顔の赤くなっている翠がそう言う。
……顔が赤くなるとか、どれだけ笑ったの、翠。
やっとおさまってきた笑いに、口を押さえていた手を離す。