あの春、君と出逢ったこと
絶対勘付いたであろう煌君と翠と肝試しの場所に向かいながら話していると、翠がいきなり立ち止まった。
そんな翠の見ている方向を見ると、目の前に女の子3人が立ち止まっているのが見えて、私も立ち止まる。
『夏川さん。ちょっといいかな?』
その中の女の子の一人が笑顔で私にそう言ってきたのを見て、思わず首をかしげてしまう。
『私、夏川さんと話した事ないから話してみたくて‼︎』
さっきとは違う女の子の言葉に渋々頷いて、翠と煌君に先に行くように言ってから、女の子達の後をついて行く。
『どこ向かってるの?』
暗くなっている際で足場の悪い道を歩きながら、女の子達にそう聞く。
『あのさ、可愛い子ぶるのやめてくれない?』
私の言葉に立ち止まって振り返った女の子が、そう言って私の肩を強く押す。
いきなりの事で反応できなかった私がそのまま地面に座り込むと、その周りを女の子達が囲んだ。
『生意気なんだよね、あんた』
『煌と仲良くなったからって、調子乗らないでもらえないかな?』
『あんたみたいな奴、気に入ってもらえるわけないだろっての!』
私を取り囲みながら口々とそう言ってくる女の子達を見る。
『……何、その目。
反抗すんの?』
そんな私の視線に気づいた女の子……女が私の胸ぐらを掴んで立ち上がらせる。
『私の方が煌にふさわしいの。
だから、別れてくんない?』
そう言って私を押した女に体がよろけると、反対側にいた女が倒れかけた私の背中を押す。
……別れてって言われても、私は煌君と付き合っているわけじゃない。
告白、したくてもできないんだから。
『付き合ってるって、何の事……⁇』
よろけながらもそう呟いた私に、一瞬固まった女達が、声あげて笑い始める。