あの春、君と出逢ったこと
『付き合ってないんだ⁇
確かにそうだよねー!
こんな女が、付き合えるわけないか!』
笑いながらそう言った女を見ながら、バレないように唇を噛む。
……何も、言い返せない。
悔しいのに、言い返す言葉が見つからない。
『じゃあ尚更、煌に近づかないでくれない?』
黙ったまま突っ立っていた私にそう言った女の言葉に、女を睨みつける。
『絶対、いや』
それだけは、いやだ。
友達もやめるなんて事、絶対にしたくない。
言い返した私にイラついたのか、声をあらあげて叫んだ女が、私を押す力を強める。
3人に囲まれ、押され、フラフラになった私の肩を女の1人が掴む。
『イキナリ転校してきたくせに、本当に生意気なんだよ‼︎』
至近距離でそう声をあらあげた女が、力任せに私を後ろに押した。
後ろに倒れていくのを感じながら、来る痛みをこらえるために目を強くつぶった瞬間だった。
来るはずの痛みの代わりに、体が何かに包まれて支えられる。
……何が起こったの⁇
状況を確認するために恐る恐る目を開けると、顔を青ざめた女達が視界に入る。
『これは……っ』
焦ったように誰かにそう言った女達をみて、顔を上げて、受け止めてくれた何かを確認する。
『煌……君⁇』
顔を上げると、女達を睨みつけている煌君が見えて、思わず声に出してしまう。
そんな私の声が聞こえたのか、私を見た煌君が、そのまま私を自分の背中に隠す。
『何してんの⁇』
いつもよりワントーン低い煌君の声を聞いて、女達が小さい悲鳴を上げる。
『別に、私達は何もっ!』
『この状況で、まだ言うか』
慌てて弁解しようとした女達の言葉を遮ってそう言った煌君に、女達が後ずさる。
『これ以上、俺にもこいつにも、近づくな』
そう言って女達を睨みつけた煌君を見て、女達が慌ててこの場を去って行った。