あの春、君と出逢ったこと
『栞莉、遅かったわね?』
肝試しの場所に着いた私達を見てそう言った翠がニヤリと笑ったのを見て、慌てて煌君の手を離す。
『いろいろあったみたいね? 栞莉』
そう言ってじりじりと近寄ってくる翠から逃げるため、煌君に助けを求める。
しかし、助けを求めたい煌君は既に、快斗君のところに行っていて居なくなっていた。
『全てはきなさいよ、栞莉』
嫌な笑みを浮かべた翠に苦笑いを浮かべながら後ずさるも、捕まり、結局根掘り葉掘り聞き出されてしまった。
『……翠、鬼』
私の言葉など無視して、イラついたように女達の文句を言い続ける翠をなだめる。
……何で私が翠をなだめてるの?
普通とは違う立場に笑いが込み上げてきて、翠を押さえながら、笑いも堪える。
『でもまぁ……進展はあったようね?』
私の言葉を聞いて、やっと切り返したのか、翠がそう言ってニヤリと笑った。
切り替えたの、間違えだったかな?
こっちの翠も面倒臭い。
ニヤニヤしながらそう言ってきた翠から逃げ続けていると、快斗君が声を張り上げて、集合をかけた。
『翠、行こう!』
『後でもう1回聞かせてもらうわ』
私にそう言って、集合をかけた快斗君のいる場所に向かいながら、翠が不敵な笑みを浮かべた。
……肝試しもだけど、これも嫌だよ。
肝試しとソレとで気が重くなっていくのを感じながら、嫌々快斗君の周りに集合する。
『みんな、集まったよな?』
学級全員が集まったのを見て、確認のためにそう言った快斗君が、笑顔で、持っていた段ボール箱を私達につき出す。