あの春、君と出逢ったこと




何かの正体は、煌君の固く握られた拳だったらしく、快斗君は、直撃した頭を抱えてうずくまる。



別に、困ってはないんだけど、ね?


こんな夜に、ワザワザ仮装してお菓子もらいに来る事が不思議だったから、首をかしげただけだし。



……まぁ、快斗君は既に殴られた後だから、弁解する必要もないとは思うけどね?




『煌君はしてないんだね、仮装』


『快斗の連れだからな』


快斗君と違って、私服を身につけていた煌君に聞くと、別にお菓子をもらいに来たわけじゃないと言って煌君が笑う。


それを見て、私もそっかと笑い返した。



……誰か、いないよね?



確かここに、煌君も居て、快斗君もいるわけであって。

絶対、翠もいるってことだよね⁇





出てこない翠を不思議に思った瞬間、快斗君の後ろから、微かにとんがった何かが見えて、思わず笑みがこぼれる。




成る程。



翠も仮装させられたんだね、快斗君に。



『みーどりっ‼︎』



わざと明るい声で快斗君の後ろに回り、必死に隠れていた翠を呼ぶ。



『……栞莉っ』



案の定、快斗君の後ろには仮装した翠がいて、珍しく恥ずかしがって快斗君の後ろから出ようとしない。


< 166 / 262 >

この作品をシェア

pagetop