あの春、君と出逢ったこと
だって、黙って食べてたら、誰だってまずかったと思うに決まってるはずなのに。
その事を聞いて笑われるって、私がおかしいみたいじゃない?
『栞莉、ごめんね』
やっと笑いが治まったのか、翠が肩で息をしながら目に溜まった涙を拭う。
……泣くほど笑うって、どれだけ面白かったのさ。
『栞莉チャン、俺達変な癖があってさ!』
快斗君は、未だに笑い足りないというように笑いながらそう言う。
私は、笑いながらそう言った快斗君の言葉の意味がわからず、首をかしげる。
変な癖って……何?
『美味いもの食べると、口数が減るんだよ』
そんな私の疑問を感じ取ったのか、口元に笑みを浮かべたままの煌君が、笑いを抑えたような声でそう言った。
『へ……⁇』
美味いものを食べると口数が減るんだよって言は、つまり、美味しいって事?
あまり言葉の意味がわからない私を見かねて、翠がわかりやすく説明してくれる。
『つまりは、栞莉のカレーは美味しいって言いたいのよ』