あの春、君と出逢ったこと





だって、黙って食べてたら、誰だってまずかったと思うに決まってるはずなのに。


その事を聞いて笑われるって、私がおかしいみたいじゃない?


『栞莉、ごめんね』



やっと笑いが治まったのか、翠が肩で息をしながら目に溜まった涙を拭う。


……泣くほど笑うって、どれだけ面白かったのさ。


『栞莉チャン、俺達変な癖があってさ!』


快斗君は、未だに笑い足りないというように笑いながらそう言う。


私は、笑いながらそう言った快斗君の言葉の意味がわからず、首をかしげる。


変な癖って……何?



『美味いもの食べると、口数が減るんだよ』




そんな私の疑問を感じ取ったのか、口元に笑みを浮かべたままの煌君が、笑いを抑えたような声でそう言った。


『へ……⁇』



美味いものを食べると口数が減るんだよって言は、つまり、美味しいって事?


あまり言葉の意味がわからない私を見かねて、翠がわかりやすく説明してくれる。


『つまりは、栞莉のカレーは美味しいって言いたいのよ』


< 170 / 262 >

この作品をシェア

pagetop