あの春、君と出逢ったこと
『……何、してんの?』
格闘していた私たちに、そんな声がかけられて、思わず顔を上げる。
『お前、誰?』
『関係ないんだから、さっさとどっか行けよ』
男達がそう言う中。
私は、声をかけた人物である煌君に目で助けを求めた。
『……そいつ、俺の連れだから。
さっさと手を離して、お前らが消えろ』
私に軽く頷いてみせた煌君は、そう言ってチャラい男達を睨みつける。
そんな、睨みを利かせた煌君に怯んだのか、パッと手を離して、チャラい男達は走って行ってしまった。
『お前、店の中で待ってろって言っただろ?』
溜息と共にそう言った煌君に、思わずウッとうなる。
確かに言われたし、今回こうなったのも、私が悪いから言い返せないけど。
『本当、馬鹿だな』
そう言って鼻で笑ってみせた煌君に、頬が痙攣するのがわかる。
私が悪いってわかってるけど、それでもやっぱりムカつく。
いつまでたっても、煌君の言葉と態度にムカつかない日はこないと思うよ? 私。
『外、暗いはずだからな。
家に送ってやる』
そう言って、さっきとは違った優しい笑みを浮かべた煌君から、思わず顔を逸らす。
……反則だ。
さっきまで、ムカつくような笑みしか浮かべなかったくせに。
いきなり、そんな笑い方見せられたら、誰だって顔をそらしたくなるよね?