あの春、君と出逢ったこと
『本当は気になってるんだろ〜⁇』
『……煩えよ』
俺を肘でつつきながらニヤつく快斗の足を、思いっきり踏みつけながらそう言う。
俺に足を踏まれ、痛がる快斗をおいて、他人のふりをする。
『ちょ、待てよ煌!!!』
そんな俺に焦ったのか、痛がっていたのが嘘のように、叫びながら俺の隣に走ってくる快斗。
『転校生、気になる?』
それでも懲りずにそう言って笑う快斗を、俺はまた、無視して先に進んでいく。
『本当頑固だよな、お前。
まぁ、今日には分かるし、いいか!』
隣でそう呟いている快斗の言葉など耳に入れず、俺は校舎に入っていった。
『朝倉、聞いたか⁉︎』
教室に入ると同時に、教室の端っこで溜まっていた男達の集団に引きずり込まれていく。
『……何を』
『転校生ちゃんの話‼︎』
俺を引きずり込んだ男が、顔を輝かせながらそう言う。
……“ちゃん” って事は、女なのか。
その事を知り、微かに抱いていた興味が消え失せていくのを感じた。
『俺達、見たんだけどさ』
『その転校生、超美人だったんだぜ‼︎』
その事を聞き、盛り上がる男子の輪からバレないように外れる。
その時にはもう、俺の頭に転校生の事は浮かばなくなっていた。
『席につけ、お前ら〜』
いつも通りの緩さで、担任である桐山輝樹が入ってくるのを見て、騒いでいた周りの奴らも慌てて席に着く。