あの春、君と出逢ったこと
分かってるくせに、何て思ったのは、煌君には内緒にするとして。
『いきなり消えたから、びっくりしたよ?』
『俺が消えたみたいな言い方するな』
『そっちこそ、私が消えたみたいな言い方しなくても……っ⁉︎
すいません。私が逸れました』
煌君の言葉をおうむ返しにしようとした私を、必殺睨み技で、煌君が黙らせる。
『人騒がせな奴』
『人騒がせで、ごめんなさいねっ!』
呆れたように鼻で笑った煌君のすねを蹴って、私はギロッと睨みつける。
例のごとく、煌君には全く効いてはいないけど。
『……なあ』
『ん?』
ふ、と。
本当に突然。
煌君が真剣な声でそう言って、思わず、返事をした私の背筋も自然と伸びていくのを感じる。
『1回しか言わないから。
よく聞け』
本当に、いつもとは違う。
いつもの、無表情でも。
いつもの、意地悪な笑みでも。
いつもの、馬鹿にしたような、呆れた笑みでもなく。
かといって、たまに見せる優しい笑みでもない。
今私の目の前にいるのは、今まで見たこともない煌君で。
煌君にバレないように、息を飲む。
私達の間に少しだけ、気まづい沈黙が流れた後。
煌君が、口を開いた。
私は、できるならその先は聞きたくないのに。
それでも、聞いてみたいなんて。
自分の矛盾んする思考を抑えることなく、放置したまま煌君を見つめる。
『好きだ』
意を決したように口を開いた煌君から聞こえてくる言葉が、やけにスローモーションのように聞こえる。
『……え…⁇』
混乱して、思わず聞き返した私から、視線を外すことなく見つめてくる煌君に、私も目を逸らせなくなる。
『……俺は、お前が好きだ』
私の言葉への返事なのか、もう一度、はっきりとそう言った煌君に、頷いてしまうのをこらえる。
『返事は、今じゃなくていい』
だから、今まで通り友達として接してくれと言った煌君に頷く。
周りはざわついているはずなのに、なぜか私達の間にだけ沈黙が流れて。
気まづさと驚きで何も言えない私を、煌君が見つめるのがわかる。
……嬉しい、はずなのに。
どこか苦しいのは、きっと、私の運命なんだと思う。
誰しも、甘いだけの恋をするわけじゃないんだから。
初恋はかなわない、なんて言うけど。
……それも、案外本当なのかもしれない。
1月。
煌君と、私の距離は
いつまでも、歪なまま