あの春、君と出逢ったこと
……ああ、病院か。
翠の前で倒れるなんて、失態だな。
絶対おかしいって思われたに決まってるじゃん。
そこまで考えた自分の意識が、どんどん薄くなっていくのを感じる。
次第に重くなっていった瞼を、翠の叫び声を聞きながら、ゆっくりと下ろしていく。
『……ご、めん』
誰に向けての言葉かもわからず、そう呟いて、私の意識は落ちていった。
『____り、琹莉‼︎』
聞き覚えのある声で、ゆっくり目を開けると、まずはじめに白い天井が目に入る。
『琹莉‼︎』
再度呼ばれた名前に、声のした方を見ると、涙を流しながら私の名前を呼んでいた翠と目があう。
『……翠』
掠れた声で翠の名前を呼ぶと、馬鹿やら何やら、翠が私に向かって叫ぶ。
『ねぇ、琹莉。
教えてくれないかしら。
琹莉の秘密』
そう言った翠に、目を伏せる。
でも、確かに翠には言わなきゃいけない。
どっちにしろ、ここまで見られたらバレているはずなんだから。
『……分かった』
ゆっくり頷きながらそう言って、翠を見る。
『快斗君には良いけど、煌君には言わないでね⁇』
私の言葉に頷いた翠を見て、重い口を開く。
『私ね……病気、なの。
治らなくてね。
残りも、もう2ヶ月しかなくて』
私の言葉に、翠が息を飲む音がする。
『今日、倒れて思ったの。
やっぱり、私は煌君に気持ちを伝えるべきじゃ無い』