あの春、君と出逢ったこと
side_siori
息のし辛さに、意識が浮上していく。
私の周りが、やけに騒がしい。
それに気づいた私は、ゆっくりと、瞼を上げていく。
『栞莉!』
ゆっくりと目を開けた私が見たのは、快斗君と翠、お母さんと、そして、煌君。
よく見ようと凝らした目に入ってきた蛍光灯の光に目を細めると、起きた私に気づいた翠が、思いっきり抱きついてくる。
ドラマでよく見るような、死ぬ間際の人がつけている呼吸器を見て、自分の寿命の短さを改めて知らされる。
『お前、どんだけ寝るんだよ』
呆れた声で、腕を組みながら私を見下ろす煌君を見て、朝の出来事を思い出す。
目が覚めて起きてみると、私の手を、煌君が握っていたんだから。
驚かないはずないし、忘れる筈もない。
あの後、少し、話したんだよね。
朝、だったから。
私が言った、外に行きたいってワガママに、煌君は1年前みたいに、常識だろって笑って言ったんだった。
窓の外を見ると、月と星が出ているのが見えて、落胆のため息をつく。
結局、最後まで病室だった。
それに、煌君にバレちゃってるし、ね。
何のために内緒にしたのか、分からなくなる。
『栞莉チャン、おはよう』
外は夜なのに、そう言って笑う快斗君に視線を向ける。
『今、起きたじゃん?
だからおはよう!』