あの春、君と出逢ったこと
いつも通りに、笑いながらそう言って親指を立てる快斗君に、自然と笑みが生まれる。
『……そ、だね……。
おは、よ、う』
呼吸器が邪魔でうまく喋れない為、伝わったかわからずに快斗君を見る。
『ああ! おはよう栞莉チャン』
どうやら、伝わったみたいだった。
『……栞莉‼︎』
私を抱きしめながら震えるお母さんに、ゆっくりと、震える腕を上げて背中に回す。
『おか、さ、ん』
女手一つで育ててくれたお母さんを、お父さんと同じように、私も置いて先に行ってしまう。
それが、私の心残りでもあった。
『ご、めん、ね』
伝わるように、ゆっくりと発した言葉を聞き取ったお母さんが、私を抱きしめる力を強めて、涙を流す。
『栞莉‼︎
栞莉は、何があっても、私の娘よ!
それだけは変わらない。
良い?
私の娘なら、最後は笑って迎えるのよ⁇』
自分の方が泣いているくせに、強がって笑みを浮かべながらそういうお母さんの言葉に、必死に頷く。