あの春、君と出逢ったこと



それでも、切羽詰まった煌君の声を聞いてしまえば、顔を揚げるしかなくなる。


『お前を困らせるのは分かってるけど、後悔したくなかったから』


そう言って笑った煌君は、今までで1番素敵で、輝いて、かっこよく見えた。



『……あ、りが、と』


その告白に、私は返事をすることができないけど。

その言葉を聞けた今の私はきっと、世界で1番幸せだと思う。

本気で、心の底から。



その気持ちを込めて、皆に向け、満面の笑みを浮かべる。

それと、ほぼ同時に。




私の隣にある機械から、ピーピーという音が鳴り響き、病室内にお母さんや叔父さんを含めた医者達が慌てて駆け込んでくる。


まるで、それが合図のように、胸が痛くなり、次第に息ができなくなっていくのを感じる。


『……栞莉‼︎』



苦しむ私の手を握ったままそう叫ぶ煌君に、最後の力を振り絞り、震える手を伸ばす。


『行くなよ……なぁ、栞莉‼︎』


『私、煌、君達と……出逢っ、た事、後悔、し、てない、よ。
________笑って。煌君』




さっきまでの笑みは消え、私の好きな瞳一杯に涙をためる煌君の、頬に流れた涙を拭う。


『……私は。

空か、ら、皆の、事、見守ってる』

そう言って笑った私の右手を、煌君が掴み、自分の両手で包みこむように私の両手を握る。





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