あの春、君と出逢ったこと
春
4月
大切な人が、俺の隣からいなくなって2週間。
葬式も終わり、栞莉は完全に俺達の前からいなくなった。
それでも、俺達の心の中で、栞莉は生き続けていくけどな。
『おっす! 煌』
今日からまた、いつも通り。
栞莉の居ない日常に慣れるのには少し時間がかかりそうだな、なんて思いながら、声の主を見る。
『……煩え』
『お前、やっぱブレないよなー!』
俺の背中を叩きながら快斗が声をあげて笑う。
『俺らも、今日から2年生だぜ⁇
1年って、本当、早いよな』
校門をくぐり、そう言いながら、珍しく俺の前を歩いていた快斗が、いきなり立ち止まる。
『……快斗?』
『なぁ、煌』
俺の呼びかけに返した快斗は、いつになく真剣な声色で。
『俺、栞莉チャンの分まで笑顔で生きるよ』
そう、いつもとは違う、真剣な言葉を発する。
『……常識だろ』
そんな快斗に、俺は笑みを浮かべながら答える。
『……快斗、煌?』
中途半端なところで止まっていた俺達を、聞き慣れた声が呼ぶ。
『翠、おはよ!』
俺たちを呼んだ翠に、快斗が右手を上げて、笑顔でそういう。
『……おはよう』
ボソリとそう呟き、翠が俺達の所に歩み寄ってくる。
『……桜、咲いてるわね』
俺達の眼の前で立ち止まった翠が、上に視線を向けて、そういった。
……桜、か。