あの春、君と出逢ったこと
『良いことでも書いてあったのか?
お守りにするくらいだもんなー』
ニヤニヤしながら笑う快斗のすねを、思いっきり蹴る。
この前とは違う、3階の教室。
ちょうど、桜の見える教室。
栞莉に向けて伝えるために、言うから。
桜に向かって、俺の言葉を。
一度しか言わないから聞いとけよ?
『あの春。
俺は君に出逢った事を。
俺は…後悔なんて、していない』
まるでそんな俺の言葉に返事をするかのように。
桜の木が風で揺られ、桜の花びらが一斉に舞っていった。