あの春、君と出逢ったこと
この後も、翠の活躍によりシュートを決めた私達は、勝ちという結果で試合を終えた。
『はーっ、楽しかったー!』
体育が終わり、翠の隣で着替えながらそう言う。
そんな私に目を向けた翠は、いつの間に着替え終わったのか、制服のまま制汗剤を塗っていた。
『……疲れたわ』
短い息を吐いてそう言った翠に、苦笑いを壁ながら私も制服を着る。
『本当は楽しかったくせに』
『煩いわよ、栞莉』
私の言葉に、煌君と全く同じセリフを話す翠に思わず笑みがこみ上げて来る。
『なによ?』
『んーん。ただ、本当に似てるなって!』
私の言葉にどんどん不機嫌になっていく翠に、こみ上げてくる笑いを抑える。
『……生意気ね』
『ごめんって!』
機嫌を直してくれない翠の隣を歩いて、笑いながら謝る私の頭を、翠が音を立てて叩く。
『痛いよっ!?』
『そりゃあ、叩いたんだもの。
痛いに決まってるでしょう?』
叩かれた頭を押さえて、ギロリと翠を睨むも、私の睨みなんか効かないらしく、完全無視で先を歩いていく翠の後を、慌てて追いかける。
『次は何の授業ー?』
『次は……英語ね』
『英語!? 嫌だー!』
そんな会話をしているウチに教室に着く。
周りについて行ったから、今度は迷子にならずにこれたよ?
次は、英語って言ってたよね。
自分の机の中をゴソゴソと探りながら英語の教科書を探している時、思わずピタリと止まる。
……私、まだ、教科書貰ってない。
皆、あまりにも自然に接してくれるから、今日転校してきたこと忘れてた……。