あの春、君と出逢ったこと
『……ほら、手』
うずくまりながらそう考えていた私に向かって、私の頭上からそんな台詞と共に、手が伸びてくる。
驚いて上を見ると、未だ意地悪な笑みを浮かべながらも、私に手を伸ばす煌君が居た。
……なんなんだろうな。
優しいのか、意地悪なのか、はっきりしてほしいんだけど、でも。
『……まぁ、いっか』
そう呟きながら煌君の手を取ると、煌君がそれに合わせて上に私を引き上げる。
『ありがと』
『……バーカ』
そう言って笑うと、笑みを返しながらもそんな言葉を付け加えてきた煌君の足を、思いっきり強く踏みつける。
『一言多い!』
『別にいいだろ?』
私の反抗的攻撃に少し痛がるも、すぐに元に戻った煌君は、余裕そうな笑みを浮かべた。
……朝倉煌君。
貴方を私の天敵リストに載せてあげます。
自分の頭の中で勝手に作った天敵リストの1番初めに、朝倉煌と名前を入れる。
『仕返ししてやるから』
『……勝手にやれ』
天敵リストに載った事なんて分かるはずもなく、椅子に座り英語の準備をしだした煌君を見て、ため息と共に笑みを浮かべる。
これから、この学校生活を楽しめる気がする。
隣に座る煌君と、翠と快斗君を思い浮かべて、また、クスリと笑みを零す。
窓から見える空は晴天。
外には、そろそろ散りそうな桜の木が、ユラユラと風で揺れている。
4月。
春、まず初めに。
彼らと、仲良くなった。