あの春、君と出逢ったこと
『夏川さん。朝倉は、アレ』
そんな夏川に声を掛けた見知った顔の女が、俺を指す。
俺を、アレ。と言いながら。
『本当? ありがとう。
……その』
『私は朝倉翠』
そう言って笑う、黒のロングの髪に色白の朝倉翠は、不謹慎ながらも俺の双子の妹。
『……朝倉さん?』
『翠でいいわ。
私は、夏川さんの隣の席の奴の、妹よ』
心底嫌そうな顔をしながら、翠が夏川に向かってそう言う。
『妹さん⁇
あっ、私、栞莉で良いよ。
よろしくね? 翠』
『もちろん』
そう言って2人は笑いあった後、音を立てて椅子から翠が立ち上がる。
『一緒に行くわ』
『ありがとう』
一緒に行く……って、俺の所に来るって事かよ。
2人が来ることに身構えながら、無表情を装う。
『煌ー!』
そんな俺の心情を知ってか知らずか、翠達が来る前に、快斗が俺の所に来て飛びつく。
『……煩えよ』
『何で⁉︎ 何でお前が隣なわけ!』
俺の耳元で意味のわからない事を叫ぶ快斗に、適当に相槌を打つ。
『……あの』
そんな俺達のすぐ近くで、さっきまで遠くで聞いていた声が聞こえる。
『……何?』
いつも通りに返した俺の頭を、翠と快斗が勢いよく叩く。
『……何すんだよ』
そう言って二人を睨めば、睨み返される始末。