あの春、君と出逢ったこと
『煌、あんたはもう少し優しく出来ないの』
そう言って、腕を組みながら睨んでくる翠と。
『そうだぜ、煌。
そんなんだからいつまでたっても彼女が出来ないんだ』
同じく腕を組み、座っている俺を見下ろしながら言う快斗。
……自分達の事を棚に上げて、よく言う。
そんな2人に思いながら、翠と夏川に視線を移す。
『私、気にしてないので、大丈夫ですよ?』
少し、慣れてきたのか。
いつも通りの調子を戻したのか。
夏川の話し方が、ハッキリしたものになる。
『それより隣の席なので‼︎
よろしくお願いしまふっ……っ噛んだ…』
痛そうに口元を押さえ、顔を赤くする夏川。
『……あんた、想像以上の馬鹿ね、栞莉』
そんな夏川に呆れながら翠がそう言う。
『バカじゃないよ! ……っ…いたっ…』
以外にもその言葉に反論した夏川は、痛そうに口元を抑える。
『たく……ほら、薬、塗る?』
『ん……』
翠から塗り薬をもらい、夏川が痛そうに切れた唇にそれを塗る。
……思っていたよりも、関わりやすそうな雰囲気の夏川。
俺だけではなく、俺達の会話を見ていた周りの奴らも、そう思ったのだろう。