あの春、君と出逢ったこと
……何でこんな奴にトキメイた、私!
煌君がどんな人かはわかっていたつもりだったんだけどな……。
未だに、時たま見せる天然すぎる言動に動揺してしまう。
『誰が付いて行くの!
知らない人にはついていかない。でしょ⁇』
小学校の頃に先生が言っていた言葉を思い出し、煌君に嫌味を込めた視線を送る。
そんな私の視線など華麗にスルーした煌君は、私の手を引いたまま左の方向に進んでいく。
煌君、私の腕つかむの好きだよね。
ここ最近こんな事が良くある気がする……って!
『煌君右でしょ⁇』
『お前は左だろ?』
せめてもの抵抗としてその場に留まろうとする私を簡単にひきづりながら進む煌君に、踏みとどまる力を入れる。
そんな私の抵抗に、イキナリ煌君が立ち止まる。
『お前……空見てみろ』
呆れながら振り返った煌君の言葉に空を見上げると、見上げた空は、いつの間にか真っ暗に染まって月が自己主張するように輝いていた。
『……うっ……』
そんな空を見て思わず唸る私を見て呆れた顔を浮かべた煌君は。
『怖いなら、黙って送られてろ』
そう言って勝ち誇った笑みを浮かべて私の腕を離し隣に並ぶ。
どうする? なんて。
顔を覗き込みながら聞く煌君は、絶対に確信犯だと思う。
『……お願いします』
観念した私が素直に頭を下げてお願いする。
……いつか、見返してやろう。
無言で歩く煌君の隣で歩きながらそう決意する。
翠にも手伝ってもらおうかなー。
その方が盛大的に悪戯できそうだし!
『……何を企んでる』