あの春、君と出逢ったこと
思わず口角が緩んでしまった私を怪訝そうに見ながら、脅かすようにいつもよりもワントーン低い声でそう言った煌君に、思わず肩がピクリと上がる。
『な、何も企んでないよ!』
そう言って慌てて笑う私の頭の上に腕を置いた煌君を見上げる。
『……ん?』
『腕、邪魔!』
私の視線に気づいて私に視線を向けた煌君に、思いっきりそう言って笑う。
『チビなのが悪いだろ』
私の言葉に煌君も笑いかえし、頭の上に乗っけた手で私の頭をかき回す。
『ちょ、ストップストップ‼︎』
『チビの言う事なんて聞かねえよ』
『私が小さいんじゃなくて、煌君がデカイだけだから‼︎』
言い争っていると、フッと煌君と目が会う。
『ちっさい喧嘩‼︎』
『こんなの、お前としかやらねえよ』
そう言って、2人で声を出して笑う。
『お前といると、俺まで馬鹿になりそうだ』
『それ、どういう意味さ』
街灯の明かりで、私たちの影が並ぶ。
5月。
煌君の意外な一面を知る事ができた。