あの春、君と出逢ったこと
ワラワラと夏川の周りに人が集まっていき、いつの間にか、人だかりができていた。
『うわ〜……夏川チャン、人気だね〜』
その人だかりを見て、快斗が面白そうに言う。
『……栞莉、大丈夫かしら』
心配そうに人だかりを見る翠が、つぶやくようにそう言ったのを聞いて、少し考えを巡らせる。
『……お前ら、夏川、困るんじゃねぇの?』
考えを巡らせてたどり着いた結果であるその言葉を、人だかりに向けて言う。
『お前は良いよな‼︎‼︎ 煌!
夏川さんと隣の席なんてよー』
俺の言葉に振り返った男達が、そう言いながら今度は俺の所に集まってくる。
そのおかげで、俺の席に人だかりができあがった。
『栞莉ちゃん、何かあったら言ってね?
このクラス、団結力だけは強いからさ!』
『……うん!』
そう言って笑ったクラスの女を見て、夏川が笑顔で頷く。
不覚にも。
周りを含めて、俺も。
夏川の笑みに、見惚れてしまった。
『……夏川チャン、ヤバイって』
男軍にしか聞こえないような声で、快斗がそう呟き、周りの男がそれに同意して頷く。
……これが、俺と夏川の、出逢いだった。