あの春、君と出逢ったこと
そんな2人の会話に、1人首をかしげる。
『……栞莉、今日の放課後、お見舞いに来てくれないかしら?』
快斗君との会話が終わったのか、首をかしげる私を華麗にスルーした翠が、何かを企んだ顔でそう言ってくる。
……煌君のお見舞い⁇
行きたいのは山々なんだけど。
翠のその顔、絶対危険だって私の頭の中の危険信号がビービー警告してる!
『マジで⁇ 俺も行くー!』
『あんたは要らないわよ』
私の返事を待つよりも先に賛成した快斗君に、いつも通り翠が冷たい視線を送る。
……ダメじゃん、翠。
それじゃあ、快斗君に気づかれないよ⁇
この前の顔の赤くなった翠を思い出し、言い合いを続ける2人を微笑ましい気持ちで見つめる。
『何、ニヤけてるのよ』
そんな私に向かって、睨みを気がせながら言う翠に慌てて弁解の言葉を並べる。
言えるわけない。
2人がいい雰囲気だったから……なんて。
言った瞬間が私の命日になっちゃうと思うよ⁉︎
『とりあえず。
栞莉、あんたも来なさいよ⁇ お見舞い』
有無を言わせに口調の強さでそう言った翠に、苦笑いを浮かべながら頷いて見せる。
……お見舞い、かぁ。
初めてだな、お見舞いなんて行くの。
『リンゴとか、買ってきた方がいいの?』
自分の知っているお見舞いを思い浮かべながら翠にそう聞くと、翠も快斗君も、驚いたような表情でこっちを見ているのに気づく。
……私、変な事言った?
お見舞いって、リンゴとか、花とか、持っていくものだよね?
『……栞莉。
あんた、煌は病院にいるわけじゃないのよ⁇
何も持っていかなくてもいいの』
呆れたような、驚いたような声色でそう言った翠に、納得しながら頷いてみせる。
『わかった。
ごめんね、私、友達のお見舞いとか初めてで』
テレビのドラマでしか見た事なかったから。
と言って、苦笑いを浮かべる私を見て、分かりきっているという様な表情を浮かべる翠。