あの春、君と出逢ったこと


『こいつは……時々、救いようのない馬鹿になるよな』



俺の言葉に、翠だけでなく快斗まで頷く。



『それ、どういう意味⁉︎』




そんな俺らを見て、薬を片手で振り回しながら翠に向かって抗議し始める栞莉を眺める。




『……煌って、マジなのか?』



そんな俺の肩に手を置き、聞こえないぐらいの小さい声で。
そう呟いてきた快斗の腕を払い落とす。



『……煩え』



こいつは、煩い。



特に、こういう恋愛系統の話題の情報は確実に確保するぐらいの情報通だしな。




『否定しないってことは、認めるって事だろ?』



『認めるとも言ってない』



ニヤニヤしながら突っ掛かってくる快斗を睨みつけ、距離をとる。



『栞莉、煌に薬飲ませきれなかったの?』




栞莉が背中に隠した薬を指しながら言った翠に、栞莉が苦笑いをしながら誤魔化すように視線を泳がせる。



……あいつ、本当嘘つけねえ奴。



素直すぎて、将来騙されるだろ。






そう思いながら2人を見ていると、いまだにニヤけている快斗が俺の顔を覗き込んでくる。


『顔、うざい』




『そりゃあね〜。

煌君が自然と笑みを浮かべているとか、レアだしねぇ〜⁇』



気持ち悪い語尾の伸ばし方で、君付けしながらからかう様にそう言った快斗の足を踏みつける。



『……煩え』




『出た! 煌の口癖‼︎

煩え。だよな⁇』




……何だろうな。



こいつと話していると、精神的に追いやられていく感じがするんだよ。



要するに、疲れる。



『ちょ、煌君⁇ 無視しないでくれませんかー』



無視を決め込んだ俺の周りを、そう言いながらグルグルと回る快斗。




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