あの春、君と出逢ったこと
気が済んだのか、いつも通りに戻った翠が、俺の後ろに隠れている栞莉に向かってそう言う。
『そうだった!
そういえば、食べてない!!!!』
ドーナツに食いついた栞莉が慌てて俺の後ろから出て翠のところに駆け寄る。
『下にあるわ。
食べましょう?』
『うん。
煌君も快斗君も、行こう!』
翠に手を引かれ、階段を下りながら振り返り俺達にそう言って笑う栞莉に、頷き返して見せる。
『おい、置いていくぞ。快斗』
俺の言葉に、翠に何を言われたのか、隅っこで座っていた快斗が勢いよく立ち上がる。
『俺と栞莉チャンが似てるなら、絶対煌と翠チャンも似てるよな!』
『それは、双子だからだろ』
そんな会話をしながら階段を降りる。
……今回は、薬を飲まなくても治ったのか。
いつもは飲むまで治らないのに、な。
『あ!
2人ともやっと来た』
『遅かったわね』
既にドーナツを頬張りながら、俺達が来たのを見てそう言う栞莉と、呆れた声で言った翠を見て、口角を上げる。
何気に、良いコンビだよな、この2人。
『煌君? 食べないと、私が全部食べるからね!』
『栞莉チャンそれ何個目!?』
『んー、3個!』
ワイワイと騒ぎながらドーナツに手を伸ばす3人を見て、俺も快斗の隣に座ってドーナツを取る。
たまには、こんなのも悪くないかもな。
なんて思いながら、ドーナツを口に入れた。
6月。
俺達の距離が
日に日に近づいているのを感じた。