あの春、君と出逢ったこと
でも良いじゃん、別に。
テスト勉強はちゃんとしてるし、宿題もちゃんと提出してるから、テストも平均ぐらいだし。
『そう考えてみれば、快斗は寝てないのに分からないのがおかしいよな』
既に頭を抱えギブアップ状態の快斗君を見て、煌君が溜息と共にそう言う。
『快斗、今回のテストは死ぬ気で頑張るのよ。
そうしないと、快斗だけ夏休み無くなるわよ』
翠の言葉に快斗君が勢いよく頭を上げる。
……そうなんだよね。
中学の頃でさえ、快斗君は赤点取ってたって煌君と翠が言ってたから、結構危ないんだよね快斗君は。
『助けてください、煌様‼︎
このままだと、俺の夏休みが補習の奴に連れ去られてしまう!』
『……何馬鹿なこと言ってんだ。お前』
『夏休み死守の為に!
俺に、勉強を教えてください‼︎』
こんな感じで、昨日快斗君が煌君に頭を下げてお願いしたんだよね。
だから、今日。
今日、煌君達の家は空いてないらしくて、私の家で、快斗君の為に勉強会をしようって事になった訳なんだけれども。
快斗君だけ、一向に進んでないんだよね……。
『煌様‼︎
俺に勉強をっ!』
昨日のように頭を下げてお願いした快斗君を横目で見て、煌君が深いため息をつく。
『……ついて来いよ』
『はい!』
『2度は教えない』
『はい!』
『最後の確認テスト、満点取るまでだ』
『は、はいっ!?!?』
最初のテンポとノリで答えようとした快斗君の最後の声が上ずる。
『確認テスト満点!?!?』
驚きながら言った快斗君に、シレッとしながら無表情で頷いた煌君を見て、快斗君が項垂れる。
『ダメだ、俺。
栞莉チャン、今日泊まりになる』