あの春、君と出逢ったこと
そう言って益々項垂れた快斗君の頭を、煌君と翠が思いっきり叩く。
……バシッてなったよね!? 今!
絶対痛いよ、あの双子の平手打ち。
『いってぇ!』
案の定痛かったのか、さっきとは違う意味で頭を抱え込む快斗君に、哀れみの目を向ける。
御愁傷様です。快斗様。
私には、あなたを救うことは出来ません。
朝倉双子という名の鬼を前に、私が手を出せるわけありません。
なんて、変な思考を頭の中で巡らせていると、翠が私の眼の前で手を振ってるのが見え、我にかえる。
『何ボーッとしてるのよ』
『ごめんごめん。ちょっとね』
蛇に睨まれたカエルのように、朝倉双子鬼に睨まれた快斗君に手を合わせてた。
なんて言ったら、翠の頭に本当に角が生える危険性があるし。
絶対口外できません。
『栞莉チャン、これの解き方教えてくれ!』
双子にいじめられた快斗君が私が解いている問題集を覗き込んで、今解いている問題を指してそう言う。
『……快斗君、これ、発展問題だよ?』
『知ってるぜ?
栞莉チャンが本当に勉強できるのか、証明してもらおうと思ってな!』
自信満々にそう言った快斗君をまじまじと見る。
……つまり、まだ疑っていると?
何だろう、私、そこまでバカに見えるのかな?
『……分かった。
解きながら説明するから、よく聞いてよ?』
『おう!』
私の言葉に快斗君が笑顔で頷き返したのを見て、快斗君の様子を伺いながら順を追って、細かく説明していく。
『コレはこうなって……それでこれが……』
私の説明に相槌を打つ快斗君に、本当にわかっているのか疑問に思いながらも説明を続けていった。