あの春、君と出逢ったこと
『……もうダメだ。
俺、頭痛い』
『まだ、1問目だよ?』
あれから5分後。
さっきと同じように頭を抱える快斗君を見て、さすがの私も焦る。
だって、これはヤバイよね?
まだ1門で、しかもゆっくり解いてダウンしてるって……。
『快斗君、どうやって高校受験勉強したの⁇』
『俺、高校は運で受かった!』
私の言葉に嬉々として起き上がった快斗君が、自慢げにそう言う。
『自慢する事じゃねえよ』
『そうよ。
たまたま、快斗の得意な範囲ばっかだったってだけでしょう?』
呆れたように溜息をついた煌君と翠を見て、快斗君が鼻をならす。
『それが運っていうんだ!』
……だから、それ、自慢にならないよ。快斗君。
それに、今回のテストは1学期の全範囲が出てきくるし、快斗君、今のところ得意な範囲無いんだよね?
『だからこうして勉強してるんだろー?』
机の上に広げてあった自分の参考書を翠と煌君に掲げ、ドヤ顔を浮かべる快斗君に、私も含めた3人が同時に溜息をつく。
『お前、進んで無いだろ?』
『基礎すらできないじゃない』
『5分でダウンするのは……ヤバイかな』
煌君達の後に続けて言葉を発した私を見て、快斗君がショックを受けたような表情を浮かべる。
『し、栞莉チャンまで言っちゃう⁉︎』
いかにも落ち込みましたアピールをする快斗君を見て、壁にかかっているカレンダーに視線を移す。
今日が15日で、テストが20日だから……。
……5日しかないよね?
快斗君、本当に夏休みなくなっちゃうよ。