あの春、君と出逢ったこと



『快斗君、夏休み、何したい?』



部屋の隅で落ち込んでいる快斗君に、そう声をかける。


『夏休み?』



夏休みという単語を聞いて、機嫌を直したのか、いきなり立ち上がり、意気揚々と夏休みの計画を語る快斗君。



『夏休みはな!

このメンバーで祭り行ったり、花火したり、夜の学校のプールに忍び込んだり‼︎


楽しそうだろ? なっ?』



私に振ってきた快斗君の言葉に笑顔で頷く。


楽しそうだね、祭りに花火にプールに……。



『じゃあ、その計画やる為に、今頑張って勉強しないとね?』



そう言った私の言葉に固まり、快斗君がカレンダーに視線を移す。



『後5日が、俺の夏休み計画成功の為に頑張らないといけない時期?』



『うん』




快斗君の言葉に頷いた私を見て、快斗君が気合を入れ直して机に向かう。



『夏休み計画の為、頑張るよ。俺』



そう言って自分から参考書に取り掛かった快斗君を見て、安堵の溜息をつく。



よかった。快斗君が乗ってくれて……。





『……栞莉、あんた以外と確信犯よね』



翠の隣に座った私に、快斗君の方をチラッと見ながら翠がそう言う。



『そうかな?

でも、私も祭りとか行きたいから』




そう言って笑った私に、翠も口元に笑みを浮かべる。



『そうね』




快斗君の夏休み計画は、本当に楽しそうだったしね?


充実した夏休みが過ごせそう。



そんな事を考えながら、自分も問題を解き進めていく。



『……お前は、夏休みしたい事あるのか?』



突然、目の前で勉強していた煌君がそう言って私を見る。


私が、夏休みにしたい事?


『んー……』




夏休みにしたい事、かぁ……。




悩み続ける私を見て、煌君が口角を上げる。


『そんなに考える事かよ』



『だって、皆となら何しても楽しそうだし!』



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