あの春、君と出逢ったこと
『本当っ? どこどこ!?』
翠の名前を見ようと背伸びをした私に、翠が呆れた顔で1点を指差す。
その1点に視線を向けてみると、確かに朝倉翠と書かれていて、順位を見るため、少し上に視線を移す。
『……え?』
上に視線をずらし、視界がとらえた順位を見て思わず声を漏らして固まる。
『……栞莉⁇』
固まったまま動かなくなった私を心配したのか、私の目の前で手を振る翠に、慌てて我に帰る。
『翠、頭物凄く良かったんだね……』
もう一度、翠の順位に目を向けると、朝倉翠と書かれた名前の上には、堂々と1の数字が書かれていた。
……しかも、1って数字だけでなく、名前の下に書かれた数字は、790/800。
つまり、800点中790点……。
驚きと尊敬を含めた視線を翠に向けると、苦笑いを浮かべた翠が、自分の名前の隣を指す。
『……うわっ』
翠の差した先に視線を向けると、789/800と書かれた上に、朝倉煌と書いてあるのが見えて、思わず驚きの声を上げる。
もちろん、順位は2位で。
『……2人とも、頭良すぎ……』
引きつった笑みしか浮かべきれないほど驚いている自分に気づき、翠にそう言って、周りに煌君達が居ないか探す。
この結果、絶対煌君が不機嫌になっちゃうやつだよね?
昨日だって、翠のことを話してるときは大体不機嫌だったし。
『うお! さすが煌と翠チャンだなー。
今回もワンツートップ‼︎』
そんな私の心配をよそに、私の後ろから、聞いたことのある声が、聞いたことのある名前を呼びながらそう言った。
『……チッ』
もちろん、その舌打ちにも聞き覚えがあって。
恐る恐る後ろを振り返ると、キラキラとした目で順位を見つめる快斗君と、そんな快斗君とは対照的に、眉間にシワを寄せて順位を見る煌君。