あの春、君と出逢ったこと
『私がどうしたの?』
人だかりを出て、一息ついた私の肩に、いきなり手が置かれたせいで慌てて振り返る。
『翠‼︎』
振り返ってみると、怪訝そうに眉間にシワを寄せた翠の表情が、私の肩に手を置いた状態で、呆れた笑みに変わって行くのを見る。
『翠のおかげだなって考えてたの!』
少し遠くなった順位表を指して笑うと、何かを思い出したかのような声を上げた翠が、私の頭に手を置く。
『ん?』
『3位だったじゃない。
偉いわね』
からかうような声色で言いながら、翠が私の頭に置いた手をポンポンと上下させた。
そんな翠の手を跳ね除けて、目を細めてやると、クスッと笑みを浮かべながら、翠が自分の目の前で両手を合わせる。
『子供じゃないんだから、子供扱いしないでよ』
そんな翠を無視して顔をそらした私を見て、視界の端で翠が少し慌てる様子が映り、少しだけ口角を上げる。
『あ、いた‼︎ 翠チャン、栞莉チャーン‼︎』
そんな状況の私達に、人だかりの中から、空気の読めないほどハイテンションな声が聞こえて、翠と顔を見合わせて笑う。
『落ち着きがないわね、全く』
『まぁ、それが快斗君じゃないかな⁇』
溜息と共に発した翠の言葉を聞いて、快斗君少しフォローしながらも、人だかりの中で手を振る快斗君達を見て笑ってしまう。
達と言っても、快斗君だけなんだけど。
快斗君の隣で歩く煌君は、翠と同じ表情を浮かべてダルそうに隣を歩いていた。
『……翠って、本当煌君そっくりだね』
『栞莉。それ、本気で言ってるなら、遠慮なく殴るわよ?』
聞こえないようにつぶやいたはずの言葉を翠に拾われ、両手で口を押さえる。
……何となくとかじゃなくて。
どことなく似てるんだよね。この2人。