妻に、母に、そして家族になる

バイトを終えてマンションに向かっていると、公園から鎖が軋む音がした。

顔を向けると、そこには昼頃ひまわりにやってきた男の子がブランコに乗っていた。

今度は迷わず公園に入り、一直線に男の子の所へ向かう。

「こんにちは」

あいさつをすると、男の子は怯えた顔を向けてくる。

逃げそうな素振りを見せたので、すぐに言葉を繋げた。

「あ、ほら。お弁当屋の……」

そう言うと、男の子はすぐに怯えた顔を反転させて、春のお日様みたいな笑顔を向けてくれる。

「お弁当屋のお姉ちゃん」

「そうそう」

よかった、覚えててくれて。

「もう六時半だよ。そろそろお家に帰ったほうがいいよ」

「あ……うん」

歯切れの悪い返事だ。

せっかく顔を見せてくれたお日様が隠れてしまった。