妻に、母に、そして家族になる
カフェオレを一口飲んで、フゥと一つ息を吐く。

「でも、ハルくんに私が居てくれたら幸せだって言われた時、複雑な気持ちになりました」

「どうして?」

「だって私、いつかあの家から出て行かないといけないんですよ。なのにそんなこと言われたら、ますます出て行きたく無くなっちゃって……」

「ははは。橘さんらしいね」

「もうっ、笑わないでください。これでも真剣に悩んでるんです」

「ごめんごめん。でも出て行きたくなかったら、ずっとあの家に居ても良いんだよ」

ずっと居ても良いなんて、そんなプロポーズみたいなことを言って。

「そんな訳にはいきませんよ。私は所詮居候なんですから、負担になりたくないんです」

負担になりたくないとは言っても、あの家を出て行きたくない矛盾。

信濃さんの御好意に甘えて、ズルズルとあの家に居座り続けている私。

そんな浅ましい私に

「橘さんは負担よりも遥かに助かってる部分が大きいよ。ハルも甘えられる人が傍にいてくれるから、とても幸せそうだし」

と、優しい言葉を掛けてくれる信濃さん。
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