妻に、母に、そして家族になる
「あくまで私の想像なので、真実ではないかもしれませんが、私はそう思います。それに、前にも言いましたけど、今の信濃さんは立派なお父さんですよ」

「ありがとう。でも、その立派な父親に近づけたのも橘さんのおかげだよ」

私のおかげ?

何かしたかな……。

記憶はないけど、信濃さんがそう言うのだから、気付かない内に何かしたのかもしれない。

それにしても、ハルくんは昔と比べて随分と様子が変わったようだ。

今じゃ自分の部屋に戻るのは寝る時ぐらいで、殆どの時間をリビングで過ごしている。

昔は物陰に隠れていたなんて想像出来ないぐらい堂々とリビングにいるのだ。

そう言えば、初めて出会った頃と比べて、表情も随分明るくなった。

あの今にも空気に溶けてしまいそうな物悲しい雰囲気も消えていて、たまに不安になって甘えてくることもあるけど、毎日ニコニコしていて元気に過ごしている。

ハルくんの状態が好転している証拠だろう。

これからも慈しみ癒していけば、過去に受けた心の傷は徐々に塞がっていくと思う。
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