妻に、母に、そして家族になる
「ハルくんが心配ですし、早く帰りましょう。それに何だかすぐにでもハルくんをギューと抱きしめたくなりました」

「本当に橘さんはハルが好きだね。じゃあ早く帰ろうか」

信濃さんがアクセルを踏み込むと、車のスピードが少し上がる。

マンションが見えてくるといつもの場所に車を停め、それぞれ荷物を持ってエレベーターへと向かう。

そのままいつものようにエレベーターに乗り込もうとすると、背後から焦った様な足音が近づいてくる。

「弥!」

初めて聞く女性の声が信濃さんの名前を呼ぶ。

誰だろうと後ろを振り返ると、そこにいたのは信濃さんと同じぐらいの年齢の女性だった。
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