妻に、母に、そして家族になる
フミちゃんなんて、呼ばれたことのない呼び方に少し驚く。

でも、ハルくんの目がまた私に会いたいと訴えている気がして、すぐに笑顔を作った。

「また会えるよ。でも、今度お弁当屋さんに来るときは、お父さんかお母さんと一緒に来てね」

「……うん。ばいばい」

ハルくんの小さな背中はすぐに公園の入り口を出て消えてしまう。

お母さんと言うワードにハルくんは少し悲しそうな顔をした気がした。

ハルくんにとってお母さんというワードは禁句なのかもしれない。

離婚してしまったのか、亡くなってしまったのか。

わからないけど、あの子の前では口にしてはいけないらしい。

まだ小さいのに、すでに大きな悲しみを背負っているかもしれない。

私はハルくんの姿が見えなくなっても、しばらく公園の入り口を見つめていた。
< 12 / 128 >

この作品をシェア

pagetop