妻に、母に、そして家族になる
お仕事大変なのかな。

常連客ともいえるその人だけど、私は彼がどんな仕事をしているか知らない。

興味はあるけど、ただの店員の私が聞いていいのか分からないし、こっちから話し掛ける勇気もない。

いつものように出来立ての温かいのり弁を袋に入れて、男性を呼ぶ。

「いつもありがとうございます」

笑顔で手渡すと、男性は微かに笑って小さく会釈してから店を出て行く。

微笑んだ顔も素敵だ。疲れた顔をしていなければもっと素敵だろうな。

それから徐々にお客さんの数が増えていき、あっという間にバイトの時間が終わる。

ひまわりのバイトを終えて、茜色の空を眺めながら考えるのは男性のことばかり。

マンションが並ぶ道を歩き、自宅のマンションに向かっていると、いつも横切る公園に小さな影があった。

公園の奥に設置されたブランコに乗った一人の男の子。あまり楽しくなさそうにゆらゆらと小さくブランコを漕いでいる。

腕時計を見ると、もうすぐ六時半。

今は夏で、いくら明るい時間が長いからと言っても、小さな子供がこんな時間まで公園にいるなんて危険だ。

お母さんだって心配してるかもしれないのに。
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