妻に、母に、そして家族になる
「ハルくん。しばらくあの公園に近づいたらダメだからね」

「……でも、フミちゃんに会えないのはヤダ」

手をギュッと握りしめ、俯くハルくんの全身から、会いたいという気持ちが痛いほど伝わってくる。

私は笑顔を作るとその俯く頭を撫でた。

「大丈夫。また会えるよ」

そしてさっき借りたハンカチを見せる。

「借りたハンカチ、洗って返さないといけないからね」

最初目をパチパチさせていたハルくんだけど、次第に笑顔を綻ばせた。

やっぱりハルくんの笑った顔は素敵だ。

こっちまで幸せな気持ちになってしまう。

「今日のお礼もしたいですし、プライベートの番号を書いておきますので、後で連絡をください。待ってます」

信濃さんは名刺を取り出すと、その裏にボールペンで書いて渡してくれる。

長方形の紙には信濃さんの名前と会社名が書いてある。

その会社名は誰もが知っている一流企業の名前があって、そこの営業部に所属しているらしい。
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