妻に、母に、そして家族になる
「どうぞ」

「ありがとうございます」

一口飲むとほうじ茶のような香ばしい味が口に広がる。

緑茶だと思ってたから、少しビックリした。

「お寿司はこの回ってるのを取ればいいんですか?」

「それでもいいけど、この機械で注文もできるよ」

信濃さんがなにやらタッチパネルの機械を操作すると、メニュー画面が表示される。

凄いなー……。

「回転寿司ってハイテクな注文方法なんですね」

「ふっ、はは」

可笑しな発言をしてしまったのか、信濃さんが肩を震わせて机につっぷしてしまう。

そ、そんな変なこと言ったかな……。

だって今まで機械で注文したことが無かったから……。

信濃さんは笑いがおさまると、目の縁に浮かんだ涙を指で拭った。

まだ笑いを堪えているように見えるのは気のせいじゃないだろう。
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