妻に、母に、そして家族になる
すぐにでも治療を行わなければ命が危険だと言われ、私は大学を辞めなければならなくなった。

でも、大学なんてまたお金を溜めて入り直せばいい。

それよりも深刻だったのは、放射線治療の後遺症で子供ができない体になってしまったことだ。

愛する人の子供を産む。

それができないのだと申告されたとき、言葉にできないほどショックで、何度涙を流したかわからない。

そんな私を哀れんで、両親も家を飛び出したことも許してくれて、心配だから家に帰ってくるように言ってくれたけど、断った。

がんの完全寛解と言われる五年を過ぎるまでつねに再発の可能性が付き纏う。

再発をすれば死亡率が高くなる。

再発しても後悔しないように生きたい。

両親がそばにいてくれるのは安心できるけど、それでも私は一人の自由な時間を選んだ。
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