妻に、母に、そして家族になる

慣れてきた暮らし

新しい日々の始まりは六時にセットした目覚ましの音で始まる。

目覚ましを止めると、グンッと体を伸ばし、閉めきっていたカーテンと窓を開けた。

開け放たれた窓から澄んだ風が全身を通って部屋の中へと入り込む。

日々冷たくなっていく風が本格的な秋の始まりを感じさせた。

「今日もいい天気になりそう」

朝靄のような雲が浮かぶ空を仰ぎ見た後、窓を閉めて服を着替える。

身なりを整えてリビングに行くと、薄暗く閑散とした空気が流れていて、私はその空気を揺らさないように静かにコーヒーのポットでお湯を沸かした。

冷蔵庫から材料を取り出して朝食とお弁当を同時進行で作り始める。

ポットのお湯が湧く頃、ガチャッとリビングに繋がる扉が開いた。

「おはよう」

朝刊を片手にスーツ姿の信濃さんがリビングにやってくる。

まだ目が覚めきっていないらしく、ぼんやりとした目をしていた。
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