クールな御曹司と溺愛マリアージュ
**二年前**
部長の隣で嬉しそうに目を輝かせている背の高い男性は、河地怜生(かわちれお)。
営業部のエースで、一年前から付き合っている二歳年上の私の彼氏。そのはずだけど……。
『……というわけで、来月から河地くんは香港支社へ行くことになった』
寝耳に水だ。河地さんは私にそんなことひと言も言わなかった。いつ決まったの?もしかして急に決まったからなのか、それとも香港に行くことを私になかなか伝えられずに今日に至った…とか。
『香港に行くってことは、恵梨さんどうするんですか?遠距離になっちゃいますね』
『あぁ、う、うん。そうだよね』
私たちが付き合っている事を有希乃ちゃんは知っているからか、そう聞いてくるのはごく自然なことだ。
だけど私は何も知らない。今初めて聞かされた事実に、戸惑いしかなかった。
『では河地君』
部長にそう言われ一歩前へ出た河地さんの表情は、自信に満ち溢れていた。
『香港支社へ行くことは、私の目標でもありました』
目標?そんなの、一度も聞いたことない。
自分の力以上の仕事をとか、香港でも成績一位にとか、相変わらず自信たっぷりに語っている。
私はそんな自信があって仕事の出来る彼に憧れていて、彼の方から告白してくれた時は夢のようだった。
彼に好意を寄せている女子社員から嫌がらせを受けたとしても、どんなに仕事を押し付けられたって、彼がいてくれたから頑張れた。
だからたとえ遠距離になったとしても、私は乗り越えていける。
きっと今日、彼から話しをしてくれるだろう。『言えなくてごめん』とか、もしかしたら一緒に……ということもあるかもしれない。